交通事故コラム

2016.03.29更新

 

被害者の方が事故後当面の資金を得る方法として、仮渡金もしくは内払金を請求することが挙げられます。受け取った仮渡金、内払金については、最終的に示談する際に既払金として差し引かれることになります。

 

  • ○ 仮渡金請求(仮渡金制度)

治療継続中で損害賠償の額が確定する前でも、将来損害賠償として支払われるであろう金額を当座の資金の支払いのために自賠責保険会社に対して先に請求することができる制度です。請求しうる金額は,下記のように被害の程度によって決められています。

 

①死亡の場合・・・290万円
入院14日以上かつ治療30日以上を要する場合・・・40万円
大腿骨・下腿骨の骨折の場合・・・40万円
上腕又は前腕の骨折の場合・・・20万円
入院14日以上を要する場合・・・20万円
入院を要し治療30日以上を要する場合・・・20万円
治療11日以上を要する場合・・・5万円

 

仮渡金請求ができるのは、一回のみであり、また、傷害の場合は、自賠責保険金120万円の枠が残っている場合に限られますので注意が必要です。例えば、「入院14日以上を要する場合」として20万円を請求したい場合であっても、既に治療費として110万円が支払われていた場合には、残額の10万円のみが支払われることになります。

 

  • ○ 内払金請求

以前は、自賠責保険にも仮払金に類似する制度として「内払金」というものがありましたが、平成20年に廃止されています。そこで、現在、内払金請求は相手方加入の任意保険会社にするしかありません。支払の対象となるものは、基本的に治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害等の損害に限られています。この内払請求は、自賠責保険に対する仮渡金制度とは異なり、法令で定められた制度ではなく、任意保険会社の独自の判断に委ねられているものです。したがって、相手方加入の任意保険会社に内払金を求めたとしても必ず支払われるとは限らない不確実なものといえますが、休業損害が長期間生じているような場合には支払われるケースが多いようです。通院や休業が長期間に及ぶ場合には請求を試みるとよいでしょう。

 

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2016.02.12更新

交通事故被害に遭われたときは、加害者(加害者加入の保険会社)から損害賠償してもらうのが通常ですが、ひき逃げや相手方が無保険の場合、加害者と争っている場合など、何らかの理由によって加害者側からスムーズに損害を賠償してもらえないケースもあります。そのような場合は、まず利用できる保険はないかを必ず確認するようにしましょう。

 

 〇 労災保険

勤務中や通勤中に交通事故被害に遭った場合には、労災保険が適用される可能性があります。労災保険が使える場合、ご自身にも過失がある場合であっても、過失相殺されることなく治療費や休業損害(平均賃金の60%に相当する額+休業特別給付金と して平均賃金 の20%相当額)を支払ってもらえるため、過失割合に争いがある場合にはメリットが大きいといえます。ただし、労災保険から休業損害として支給されるのは、平均賃金の60%に相当する額と特別給付金として支給される平均賃金の20%分を合わせた80%にとどまります。

基本的に、損害の二重取りは許されないため、労災保険金を受給した後に相手方に損害を請求する際には、損害額から受給した労災保険金が差し引かれることに なる(これを「損益相殺」といいます。)のですが、特別給付金については、損益相殺されることはありません。8割分の休業補償を受けた場合であっても、損害額から差し引かれるのは6割分にとどまり、残りの4割分を加害者側に請求することができるのです。つまり、被害者としては、結果的に平均賃金の120%に相当する額を受給できることになります。さらに、交通事故が原因で後遺障害が残った場合は、その障害の程度に応じ、「障害補償給付」、「障害特別支給金」が支給され、重度の後遺障害の要件を満たす場合には、「障害補償年金」が支給され、将来の生活費に充てることが可能です。

労災保険が適用される事案であるにもかかわらず、「会社に労災は使えないと説明された」、「上司から労災を使わないでほしいと頼まれた」として、労災保険を使わない方もいらっしゃるのが現実です。しかし、労災保険を利用するメリットは大でありますので、困ったら、労働基準監督署や専門家に相談されることをお勧めします。

 

〇 人身傷害(補償)保険

人身傷害(補償)保険は、人身事故で被った損害について、過失割合にかかわらず基準に応じた額が支払われるというものです。自らにも過失がある場合、自己の過失割合分については、加害者側に損害賠償請求をすることができません。しかし、ご自身で加入の保険に人身傷害(補償)保険が付いていれば、加害者側に補償してもらえなかった自己の過失割合分を各保険会社が定める基準の範囲で補填してもらうこと ができるのです。また、当事者間で過失割合に争いがあり、加害者側保険会社が対応を拒んでいる場合なども、人身傷害(補償)保険があればスムーズな支払い をしてもらうことが可能です。

 

 〇 搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は、交通事故により運転者や同乗者が死傷したとき、入院・通院日数、または部位症状別に定額の保険金が支払われるという保険です。ケガに関する保険金の支払われ方には、「日数払い」と「部位症 状別払い」の2つの種類があります。支払金額は、症状に応じて10万円・30万円・50万円・100万円と金額としては大きいものではありませんが、当面の生活費を捻出する方法として活用するとよいでしょう。

 

その他、ご加入の傷害保険、医療保険、生命保険、各種共済の内容によっては、一定額の保険金が支払われる場合があります。

 

ご自身の保険証券でなく、ご家族の保険証券についてもきちんと確認しましょう。

 

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2016.01.15更新

交通事故の被害に遭われた方の中には、怪我をして仕事を休んだり、事故が原因で退職を余儀なくされたりしたことで収入が途絶え、生活に困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。怪我の内容・程度によっては、治療期間、休業期間が長期化し、それに比例して経済的な負担が増していくことも少なくありません。

 

相手方が任意保険会社に加入している場合には、通常、その保険会社が治療期間中の治療費の支払いや休業補償をしてくれることになりますが、怪我や過失割合の内容等について争いがある場合においては、保険会社が治療費の支払いや休業補償をすることを拒むこともあり得ます。では、交通事故被害に遭い、お金に困る状況に追い込まれた場合、どうしたらよいのでしょうか。

以下、事故後の治療費や生活費を捻出する方法をご紹介いたします。

 

(1) ご自身が加入している保険を活用する

(2) 相手方保険会社に内払金を請求する

(3) 自賠責保険に仮渡金請求をする

(4) 自賠責保険に被害者請求をする

(5) 裁判所に仮払い仮処分の申し立てをする

(6) 生活資金貸付制度を利用する

 

いくつかの方法を挙げましたが、いずれの方法も利用する上での要件や基準があり、全てのケースで有用というわけではありません。ご自身のケースでは、どの方法をとることが可能か、どの程度の費用を賄えるかをきちんと検討することが重要です

 

しかし、きちんと検討するためには、制度、手続、法律、保険等、専門的な知識が不可欠なため、ご自身で判断することは極めて難しいといえるでしょう。最善の方法を選択するためには、専門家にご相談されるのが一番だと思いますが、より詳しい内容を知りたいという方のために、次回から上に挙げた各方法について説明をしていきたいと思います。  

 

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2015.12.12更新

交通事故被害に遭い、怪我を負った場合には、直ちに医療機関を受診し、医師に診断書を書いてもらいましょう。ここでいう医療機関とは、医師のいる病院や医院をいい、整骨院や接骨院、整体は含みません。なぜなら、整骨院や接骨院、整体では診断書を書いてもらうことができないからです。医師に診断書を書いてもらったら、速やかに診断書を警察に提出し人身事故の届出をしてください。警察に診断書を提出しないと物損事故として取り扱われることになり、きちんとした人的損害の補償が受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。医療機関を受診し、検査を受けるタイミングとしては、可能な限り早い方がよいといえます。事故から間が空いてから受診・検査をすると、本当に今回の事故で負った怪我なのか、など疑義をもたれるおそれがあるからです。

 

自賠責保険における後遺障害認定においても、症状の発現時期や事故直後の画像検査の有無はとても重視されます。医療機関を早めに受診していないと、事故直後の診断書や検査所見がないということになる、つまり、症状を示すものが被害者本人の自覚症状しかないということになるため、後遺障害認定上極めて不利になってしまいます。実際、当事務所の手掛けた案件においても、事故から6日後に初めて医療機関を受診したために後遺障害が認定されなかった方や事故から3か月後に初めてMRI上断裂所見が認められたために事故と傷害との因果関係が否定されたケースなどがありました。

 

時間を巻き戻すことはできません。

 

あとで後悔しないためにも、事故後速やかに医師の診察を受け、適切な検査を受けるようにしてください。

 

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2015.10.30更新

ご自身にも過失がある場合、賠償時に損害額からご自身の過失割合分が差し引かれることになります。これを過失相殺といいます。たとえば、損害額が200万円で、自身に1割の過失がある場合は、過失割合1割分にあたる20万円が差し引かれ、賠償額は180万円となります。ご自身に5割の過失がある場合は、過失割合5割分にあたる100万円が差し引かれるため、賠償してもらえる額は100万円にとどまります。

 

「損害」には、通院治療費に要した「治療費」、「通院交通費」、仕事を休んだことによる損害(休業損害)のほか、精神的・身体的苦痛に対する慰謝料などがあります。

 

気を付けていただきたいのが、「治療費」も過失相殺の対象となってしまうことです。ご自身の過失が0%であることが確実でないかぎり、「治療費は相手方の保険会社が全額支払ってくれているから大丈夫」と安心することはできません。保険会社が、過失割合に関係なく治療費を全額払ってくれていたとしても、示談をする際には、損害額からご自身の過失割合分が引かれてしまうのです。

 

では、少しでも治療費を抑える方法はないのでしょうか。

 

 もし、交通事故の被害に遭われたのが、会社への通勤中や業務中であれば、労災保険が使える可能性があります。労災保険を使えば過失割合に関係なく治療費を全額支払ってもらえるため、労災保険を使うメリットは大です。

 

労災保険を使えない場合でも、ご自身の健康保険を使って治療費を抑えることが可能です。交通事故治療に健康保険を使えないと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、交通事故であっても健康保険は使えます。健康保険を使うと、診療点数の関係で健康保険を使わない場合(自由診療の場合)よりも、治療費の額がかなり低くなります。ご自身にも過失がある交通事故に遭った場合には、早めに健康保険に切り替えた方がよいでしょう。

 

詳しくは、2015年3月6日付けの交通事故コラム「交通事故治療に健康保険を使うべきか」をご覧ください。

 

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交通事故で考えられるトラブルを解決する福岡の弁護士コラム

交通事故トラブルの専門家である福岡の「弁護士法人 あずま綜合法律事務所」は、相談者様にとって役立つ情報を提供しています。例えば、交通事故に遭ってしまった場合、高次脳機能障害になってしまうケースもあります。この際、記憶や学習に悪影響が生じ、日々の生活や仕事に支障をきたしてしまうのです。
また、高次脳機能障害に限らず、交通事故によって怪我や障害を引き起こしてしまうことは少なくありません。被害者からすると、治療費やその後の生活費が必要になります。示談交渉や調停・訴訟など、ワンストップで対応できるので気軽にご相談ください。