交通事故コラム

2015.08.24更新

脳外傷による高次脳機能障害が疑われる場合、自賠責保険に対し、後遺障害等級認定の申請を行うことになります。自賠責保険においては、高次脳機能障害の審査は「特定事案」として、専門医等で構成された専門部会で詳しい調査が行われます。

 

高次脳機能障害の等級は、次のように分類されています。

 

【第1級1号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

 

【第2級1号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

 

【第3級3号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

 

【第5級2号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 

【第7級4号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 

【第9級10号】

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

 

自賠責保険においては、被害者の方の症状に応じて、上記後遺障害等級のいずれかに該当されるかどうかを判断されることになります。

高次脳機能障害として適切に等級認定がなされるためには、まずは、ご家族など身近な方が障害のサインに気付いてあげることが重要だということについては前回述べました。ポイントは、常々、被害者の方の言動や性格の変化、麻痺や歩行障害などの神経症状の有無を観察し、気付いたことや出来事をメモに漏れなく書き留めておくことです。どんな些細なことでも構いません。以前より、饒舌になった、攻撃的になった、幼稚な言動を取るようになった、嫉妬・執着心が強くなった、など(もしくはその逆)も高次脳機能障害のサインです。もし、被害者の方が脳挫傷などの脳外傷を負い、高次脳機能障害のサインが見受けられるにも かかわらず、医師より「高次脳機能障害」と診断されていない場合は、速やかに専門医が在籍する医療機関を受診し、詳しい検査を受けるようにしてください。 高次脳機能障害は、医師でも専門外の場合は判断が難しいため、早期に専門医の診察を受け、きちんとした診断書や意見書等を書いてもらうことをお勧めします。

 

自賠責保険においては、医師の診断結果が重視され、診断書、検査結果報告書などの書面や画像を基に審査がなされます。したがって、診断名がきちんと特定されていなかったり、医師が記載した書面が十分でなかったりすると、適切な後遺障害認定を受けることができません。

 

当事務所では、交通事故で脳外傷を負った被害者、ご家族の方を事故直後からサポートし、医療機関の受診の仕方や書面の取り付け方等についてアドバイスを行っております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

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2015.05.01更新

交通事故により脳に重篤な損傷が生じた場合、「高次脳機能障害」という障害が生じることがあります。

「高次脳機能(認知)」とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能の総称で、病気や事故で脳が損傷されたために、認知機能に障害が起きた状態を、高次脳機能障害といいます。

歩行中やバイク・自転車の運転中の事故で頭部を強打した被害者に、この「高次脳機能障害」が生じることが多くみられます。脳の損傷自体は画像検査で発見することが可能ですが、認知行動や人格・性格の変化は一見しただけではわかりづらいため、病院で見落とされてしまうことも少なくありません。被害者の身近な方が意識して見守り、わずかな変化にも気付いてあげることが重要です。

交通事故で脳に傷害を負った後に、次のような症状や人格・性格の変化がみられ、生活への適応や対人関係に問題が生じていると感じたら、まず、「高次脳機能障害」を疑い、適切な対応をとりましょう。

【高次脳機能障害にみられる主な症状】

記憶障害

過去の出来事を思い出せなかったり、新しい経験や情報を覚えることができない。

(会話中に単語が上手く出てこない。通り慣れた道で迷う。忘れ物が多い。予定通りに行動できない。)

注意障害

物事にうまく集中することができない。

(気が散りやすい。一度に複数のことをすると混乱する。ミスが多い。)

遂行機能障害

論理的思考力、計画的な行動力、問題解決能力、自己分析能力の低下。

(指示や計画通りに行動できない。すぐにパニックになる。今までできてきたことができない・効率の低下。)

社会的行動障害

行動や感情を適切にコントロールすることができない。対人関係をうまく築くことができない。

(喜怒哀楽のコントロールができない。幼稚化。人格・性格・癖の変化。)

 

いかがでしょうか。被害者の方に上記の症状がみられたとしても、すぐに障害と結び付けて考える方は少ないのではないのでしょうか。事故前と比べて仕事の効率が下がったり、学校の成績が下がったりとしたとしても、入院期間が長かったから仕方ないな、と片付けられてしまうことも多いのです。今までとちょっと様子が違うな、と感じたら、それは「高次脳機能障害」のサインかもしれません。

次回に、「高次脳機能障害」が疑われた場合にどのように対応したらいいか、「高次脳機能障害」の後遺障害等級認定がどのように行われるかについてご説明いたします。

 

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2015.04.15更新

交通事故により後遺症が残ったら、自賠責保険での後遺障害等級認定が済んだ後にその認定等級に応じて損害額を算定し、保険会社に損害賠償請求をすることになります。

交通事故を原因とする怪我の中で最も多いのが頚椎捻挫ですが、仮に、頚椎捻挫で後遺障害14級と認定された場合には、この14級を前提に算定した損害額を請求することになるのです。もし、被害者の方に事故前から頚椎や腰椎に脊柱管狭窄などの変性(加齢による身体の変化)、椎間板ヘルニア等が認められた場合、相手方保険会社が既存障害があるとして「素因減額」を主張してくることがあります。「素因減額」とは、損害の拡大に被害者の素因が影響している場合に、この影響を考慮して損害賠償額を減額することをいいます。保険会社の言い分としては、「14級相当の後遺障害が残ったのは、もともと事故前から変性があったせいであるから、その分賠償額を減額してください」ということです。

しかし、保険会社がこのように素因減額を言ってきても、決して言いなりになる必要はありません。最高裁は、過去に素因減額が争いになった事案において、身体的要因について素因減額が認められるのは、当該身体的要因が「疾患」にあたる場合に限られるとの判断を示し(最判平8.10.29)、また、その他多くの裁判例も、身体的要因が加齢性のものである場合には、それが被害者の年齢に照らし不相当なものでなければならず、事故による受傷と年齢相応な加齢性要因が相まって症状が出現したような場合には素因減額は認められない、と判断しているからです。

保険会社が一方的に素因減額を主張してきたとしても、自身の変性等が年相応な加齢によるものであることを医学的に反論すれば、素因減額との主張を退けられる可能性は大いにあるといえます。そのためには、診断書や医師の意見書等きちんと取り付けることが重要です。あきらめずに、専門家にご相談ください。

 

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2015.03.30更新

交通事故によって後遺症が残った場合、自賠責保険に後遺障害申請をすることができます。後遺障害申請は、相手方保険会社にお任せする形で行うこと(加害者請求)もできますし、被害者の方がご自身で請求すること(被害者請求)もできます。

後遺障害申請をすると、損害保険料率算出機構というところで後遺症の調査がなされ、1級~14級のどの等級に該当するか判断されることになります。いずれの等級にも該当しないと判断された場合には、非該当という認定になります。後遺障害等級認定の結果が非該当であった。認定された後遺障害等級が、実際の症状に比べて低すぎる。などの理由で納得できない場合は、自賠責保険に対して「異議申立て」を行い、再調査を依頼することができます。

異議申立てをする際には、異議申立書を提出することになりますが、異議申立ての書式はとくに決まっていません。ご自身で、異議の内容を異議申立書にまとめて請求することも可能です。もっとも、1度目の後遺障害申請時においても、きちんと調査がなされたうえで判断がなされている以上、その結論を覆すことは容易なことではありません。

1度目の認定結果が妥当でないことを的確に指摘し、新たな診断書や検査結果を添付するなど医学的にきちんとした主張をすることが重要となります。自賠責保険の後遺障害等級認定結果に納得できない場合は、一度、専門家にご相談するとよいでしょう。

 

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2015.03.06更新

ご相談者の方から、「保険会社から健康保険を使うように言われたが、使った方がいいのか。」という質問をよく受けることがあります。

自分は被害者なのに、なぜ自身の健康保険を使わなければならないのか、と抵抗をもたれる方も多いようですが、ご自身の健康保険を使うことで何らかの不利益が生じてしまうということではありません。

健康保険を使わない場合は、「自由診療」という形で治療を受けることになりますが、健康保険を使って治療を受ける場合と、自由診療を受ける場合との決定的な違いは治療費の金額です。健康保険を使う場合、治療費の基準となる医療点数の単価は、1点あたり10円であるのに対し、自由診療の単価は病院ごと異なり、1点あたり平均20円と健康保険を使う場合の2倍程度となっています。治療費が高くなることで最も影響を受けるのは、自分にも過失責任がある場合です。たとえば、ご自身に4割の過失があり、自由診療による治療費が100万円であったとします。この場合、自分の過失割合に相当する40万円については最終的にご自身で負担することになります。

これに対し、健康保険を使う場合は、治療費が半額の50万円程度となり、自分が負担すべき金額(過失割合に相当する金額)を20万円程度に抑えることができることになります。病院の窓口で、「事故の場合は自由診療と決まっているので、健康保険は使えません。」と言われ健康保険を使えなかった、という被害者の方のお話を耳にすることがありますが、交通事故の治療でも健康保険を使える場合がほとんどであり、病院側の説明が誤っていた可能性も否定できません。なお、通勤中や業務中の事故の場合は、健康保険ではなく労災保険が適用される可能性があります。

 

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交通事故で考えられるトラブルを解決する福岡の弁護士コラム

交通事故トラブルの専門家である福岡の「弁護士法人 あずま綜合法律事務所」は、相談者様にとって役立つ情報を提供しています。例えば、交通事故に遭ってしまった場合、高次脳機能障害になってしまうケースもあります。この際、記憶や学習に悪影響が生じ、日々の生活や仕事に支障をきたしてしまうのです。
また、高次脳機能障害に限らず、交通事故によって怪我や障害を引き起こしてしまうことは少なくありません。被害者からすると、治療費やその後の生活費が必要になります。示談交渉や調停・訴訟など、ワンストップで対応できるので気軽にご相談ください。