交通事故コラム

2016.12.06更新

交通事故相談に長年携わっていると、被害者の方から「治療費はいつまで支払ってもらえますか。」という質問をよく受けます。相手方や保険会社から治療費を支払ってもらえるのは、基本的に交通事故で負った傷害が治癒するまで、もしくは、症状固定となるまでです。

ちなみに、「症状固定」とは、「医学上一般的に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると求められる最終の状態に達すること」をいいます。簡潔にいうと、「適正な治療を続けても憎悪も軽快治癒もしない状態に至ったこと」を意味します。つまり、事故後治療を続けて、傷害が完全に治った(治癒した)ときは、治ったときまでの治療費を、また、これ以上よくも悪くもならない状態に至ったときは、その時点までの治療費を支払ってもらえるということになります。

したがって、症状固定後の治療費にかかる費用は自己負担となるのが原則です。症状固定後の治療費についても、裁判実務上は、必要性および相当性があれば例外的に治療費の支払いを受けることができるとされています。

もっとも、将来の治療に関する必要性、相当性の立証となると難しい場合もありますので、自己判断で症状固定後の治療費も回収できるとして治療を継続するのは危険といえます。

 

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2016.11.08更新

自賠責保険・共済は自動車事故により死傷した被害者の保護救済を図ることを目的としていることから、任意保険と異なり、被害者に過失があっても過失相殺をされることはありません。ただし、被害者に7割以上の過失があった場合には、保険金が一定程度減額されます。これを「重過失減額」といいます。

自賠責保険・共済においては、損害保険料率算出機構という機関が事故態様の調査を行い、重過失減額をするか否か等の審査を行っています(JA共済連を除く)。

 

被害者に7割以上の過失がある場合の減額割合は次のとおりです。

 

[後遺障害又は死亡に係るもの]

被害者の過失割合が7割以上8割未満  :2割減額

被害者の過失割合が8割以上9割未満  :3割減額

被害者の過失割合が9割以上10割未満 :5割減額

 

[傷害に係るもの]

被害者の過失割合が7割以上10割未満 :2割減額

 

ご自身の過失割合が大きく、相手方の保険会社に一括対応してもらえない場合などであっても、自賠責保険金請求を行えば最低限度の補償を受けることができる可能性がありますので、まずは弁護士にご相談ください。

 

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2016.10.07更新

加害者が未成年者の場合、被害者はこの加害者に対して損害賠償を請求することができるのでしょうか。

 

民法第712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と定めています。

自己の責任を弁識するに足りる知能を備えていない加害者、つまり「責任無能力者」である加害者に対しては、損害賠償を請求できないということです。

したがって、加害者が未成年者の場合には、まず、その未成年者の責任能力の有無が問題となります。未成年者に「責任能力」が認められるかは、その行為の内容、具体的状況、未成年者の個別の能力等により判断されます。一般的には、概ね12歳程度であれば責任能力があると考えられており、小学生以下であれば責任無能力者と判断されるケースが多いようです。

 

・未成年者に責任能力がない場合

前述のとおり、加害者である未成年者に責任能力がない場合には、その加害者自身に対しては損害賠償を請求することはできません。

しかし、次の要件を満たす場合には、その加害者の監督義務者(未成年者の親等)に対して損害賠償を請求することができます(民法第714条)。

 

①加害者が責任無能力者であること

②その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者であること(または、その者に代わって責任無能力者を監督する者であること)

③責任無能力者の行為について不法行為責任が成立しうること

④監督義務者等が法定の監督義務を怠らなかったこと、また、その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証できないこと

 

・未成年者に責任能力がある場合

加害者である未成年者に責任能力がある場合には、その加害者自身に対して損害賠償を請求することができます。しかし、未成年者には損害を賠償するだけの資力がなければ、実際に支払いを受けるのは困難です。また、未成年者に責任能力がある以上、民法第714条に基づき監督義務者である親に対して損害賠償を請求することもできません。

 

では、未成年者に責任能力がある場合、常に監督義務者である親に責任はないのでしょうか。

 

この点、最高裁は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務違反と当該未成年者の不法行為(交通事故)によって生じた結果との間に相当因果関係が認められる場合には、監督義務者は民法第709条に基づく固有の責任を負うとし、未成年者の監督義務者に対する損害賠償請求を認めています(最高裁昭和49年3月22日判決)。もっとも、監督義務者の固有の責任が認められるためには、親が子の運転する自動車に同乗して危険な運転を現認していながらこれを制止しなかったことや、子の事故・違反歴・体調不良等を認識していながら子の運転を制止しなかったこと等の具体的な監督義務違反が必要とされており、この場合に未成年者の親に対して損害賠償請求をすることは容易ではありません。

 

・運行供用者・使用者がいる場合

加害者である未成年者に対して車両を提供した所有者等(運行供用者)がいる場合、その運行供用者に対しても損害賠償請求をすることができる場合があります(自賠法3条)。ただし、物損のみの場合、運行供用者責任を問うことはできません。また、加害者である未成年者が、使用者に雇用され、使用者の事業の執行について交通事故を起こしたといえる場合は、その使用者に対して損害賠償請求をすることが出来る場合があります(民法第715条)。

 

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2016.09.02更新

「愛車を壊され、精神的に大きな苦痛を受けた。修理代のほかに精神的苦痛に対する慰謝料を請求したい。」・・・物損事故の依頼者の中には、このような訴えをされる方がしばしばおられます。長年大事にしていた愛着のある車を壊されたのに、わずかな修理代や時価額しか賠償されないのでは納得できないのも頷けます。

 

しかし、車両の物的損害による慰謝料は原則として認められません

物の場合には、修理や買換えが可能であり、物としての損害が回復されれば同時に精神的損害も回復したとみることができるから、というのがその理由です。

 

物損事故であるにもかかわらず、例外的に慰謝料が認められたのは、加害者が飲酒運転で物損事故を起こした後逃走したという加害者の態度の悪質性が高いケース、墓石・陶芸作品が損壊されたケースなど特殊なケースに限定されています。

 

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2016.08.10更新

自転車による交通事故の増加に伴い、近年、自転車に対する取り締まりが強化されていることは皆さんご存知だと思います。しかし、自転車の交通ルールをきちんと理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。

 

「改正道路交通法」(平成25614日公布、121日に施行)により、「自転車等軽車両が通行できる路側帯は道路の左側部分に設けられた路側帯」に限定されました。自転車は、車道を通行する場合は、左側を通行しなければならず、路側帯を通行する場合でも、左側部分に設けられた路側帯を通行しなければならないということです。そして、路側帯を通行する場合は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければなりません。他方、歩道を通行する場合は、左右のどちらを通行しても構いませんが、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の進行を妨げることとなるときは一時停止しなければなりません(道路交通法第17条第4項及び18条第1項)。自転車で、車道の右側を通行した場合は、通行区分(右側通行)違反に問われることとなり、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が課されるおそれがあります。

 

車道の右側を自転車で走行している人をよく見かけるのが現状ですが、これは大変危険な行為ですし、また、もし自転車で車道の右側を走行中に交通事故に遭った場合には、被害者であっても過失の内容として考慮されることになります。

 

自転車を乗る際にも交通ルールを守るよう心がけましょう。

 

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交通事故で考えられるトラブルを解決する福岡の弁護士コラム

交通事故トラブルの専門家である福岡の「弁護士法人 あずま綜合法律事務所」は、相談者様にとって役立つ情報を提供しています。例えば、交通事故に遭ってしまった場合、高次脳機能障害になってしまうケースもあります。この際、記憶や学習に悪影響が生じ、日々の生活や仕事に支障をきたしてしまうのです。
また、高次脳機能障害に限らず、交通事故によって怪我や障害を引き起こしてしまうことは少なくありません。被害者からすると、治療費やその後の生活費が必要になります。示談交渉や調停・訴訟など、ワンストップで対応できるので気軽にご相談ください。