交通事故コラム

2016.10.07更新

交通事故の加害者が未成年者の場合について

加害者が未成年者の場合、被害者はこの加害者に対して損害賠償を請求することができるのでしょうか。

 

民法第712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と定めています。

自己の責任を弁識するに足りる知能を備えていない加害者、つまり「責任無能力者」である加害者に対しては、損害賠償を請求できないということです。

したがって、加害者が未成年者の場合には、まず、その未成年者の責任能力の有無が問題となります。未成年者に「責任能力」が認められるかは、その行為の内容、具体的状況、未成年者の個別の能力等により判断されます。一般的には、概ね12歳程度であれば責任能力があると考えられており、小学生以下であれば責任無能力者と判断されるケースが多いようです。

 

・未成年者に責任能力がない場合

前述のとおり、加害者である未成年者に責任能力がない場合には、その加害者自身に対しては損害賠償を請求することはできません。

しかし、次の要件を満たす場合には、その加害者の監督義務者(未成年者の親等)に対して損害賠償を請求することができます(民法第714条)。

 

①加害者が責任無能力者であること

②その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者であること(または、その者に代わって責任無能力者を監督する者であること)

③責任無能力者の行為について不法行為責任が成立しうること

④監督義務者等が法定の監督義務を怠らなかったこと、また、その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証できないこと

 

・未成年者に責任能力がある場合

加害者である未成年者に責任能力がある場合には、その加害者自身に対して損害賠償を請求することができます。しかし、未成年者には損害を賠償するだけの資力がなければ、実際に支払いを受けるのは困難です。また、未成年者に責任能力がある以上、民法第714条に基づき監督義務者である親に対して損害賠償を請求することもできません。

 

では、未成年者に責任能力がある場合、常に監督義務者である親に責任はないのでしょうか。

 

この点、最高裁は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務違反と当該未成年者の不法行為(交通事故)によって生じた結果との間に相当因果関係が認められる場合には、監督義務者は民法第709条に基づく固有の責任を負うとし、未成年者の監督義務者に対する損害賠償請求を認めています(最高裁昭和49年3月22日判決)。もっとも、監督義務者の固有の責任が認められるためには、親が子の運転する自動車に同乗して危険な運転を現認していながらこれを制止しなかったことや、子の事故・違反歴・体調不良等を認識していながら子の運転を制止しなかったこと等の具体的な監督義務違反が必要とされており、この場合に未成年者の親に対して損害賠償請求をすることは容易ではありません。

 

・運行供用者・使用者がいる場合

加害者である未成年者に対して車両を提供した所有者等(運行供用者)がいる場合、その運行供用者に対しても損害賠償請求をすることができる場合があります(自賠法3条)。ただし、物損のみの場合、運行供用者責任を問うことはできません。また、加害者である未成年者が、使用者に雇用され、使用者の事業の執行について交通事故を起こしたといえる場合は、その使用者に対して損害賠償請求をすることが出来る場合があります(民法第715条)。

 

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