交通事故コラム

2016.06.25更新

仮払い仮処分制度は、交通事故の被害者が賠償金を受け取るまでに生活に困窮する場合に、損害賠償請求訴訟で勝訴する前に、勝訴が予想される損害賠償額の範囲で裁判所が被害者に対する仮払いを命じる制度です(民事保全法23条2項)。裁判所が仮払いを命じる具体的な金額は、被害者の治療費、被害者の生活費、治療終了までに見込まれる期間、後遺障害の残存の可能性、過失相殺の有無・程度等を考慮して決められます。

 

仮払い仮処分命令を申し立てるにあたっては、被害者は被保全権利(損害賠償請求権)の存在及び内容(金額)、保全命令の必要性(緊急性)の疎明(裁判官に、一応確からしいという推測を得させる程度の挙証をすること)を行う必要があります。疎明資料には、交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、休業損害証明書・源泉徴収票(給与所得者の場合)、確定申告書の控え(自営業の場合)などがあります。

 

仮払い仮処分命令の申立て手続きを行うには、上記資料等を取り付ける必要があり、被害者の負担は大きいといえます。また、少なからず法的知識も必要となりますので、交通事故に強い弁護士に相談されるとよいでしょう。

 

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弁護士法人 あずま綜合法律事務所
http://www.jiko-fukuoka.jp/
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TEL:092-711-1826
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2016.04.18更新

交通事故の被害者は、相手方の自賠責保険会社に対して損害賠償を求めることができ、これを被害者請求といいます(相手方が無保険の場合を除く)。

自賠責保険では、支払いの限度額が定められており、傷害事故、後遺障害を残した事故、死亡事故によって異なります(下記参照)。

 

傷害事故の場合

支払限度額は120万円

 

 

・後遺障害を残した事故の場合

(1)神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、常時または随時介護を要する後遺障害の場合の支払限度額

 

後遺障害等級

第1級 4000万円

第2級 3000万円

 

⑵その他の後遺障害の場合の支払限度額

 

後遺障害等級

第1級 3000万円

第2級 2590万円

第3級 2219万円

第4級 1889万円

第5級 1574万円

第6級 1296万円

第7級 1051万円

第8級    819万円

第9級    616万円

第10級 461万円

第11級 331万円

第12級 224万円

第13級 139万円

第14級    75万円

 

 

死亡事故の場合

支払限度額3000万円

 

 

被害者請求をすると、以上のようにまとまった一定の金額が相手方と示談する前に自賠責から支払われることになるため、示談交渉、裁判が長期化しそうな場合には有効な方法であるといえます。

 

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2016.03.29更新

 

被害者の方が事故後当面の資金を得る方法として、仮渡金もしくは内払金を請求することが挙げられます。受け取った仮渡金、内払金については、最終的に示談する際に既払金として差し引かれることになります。

 

  • ○ 仮渡金請求(仮渡金制度)

治療継続中で損害賠償の額が確定する前でも、将来損害賠償として支払われるであろう金額を当座の資金の支払いのために自賠責保険会社に対して先に請求することができる制度です。請求しうる金額は,下記のように被害の程度によって決められています。

 

①死亡の場合・・・290万円
入院14日以上かつ治療30日以上を要する場合・・・40万円
大腿骨・下腿骨の骨折の場合・・・40万円
上腕又は前腕の骨折の場合・・・20万円
入院14日以上を要する場合・・・20万円
入院を要し治療30日以上を要する場合・・・20万円
治療11日以上を要する場合・・・5万円

 

仮渡金請求ができるのは、一回のみであり、また、傷害の場合は、自賠責保険金120万円の枠が残っている場合に限られますので注意が必要です。例えば、「入院14日以上を要する場合」として20万円を請求したい場合であっても、既に治療費として110万円が支払われていた場合には、残額の10万円のみが支払われることになります。

 

  • ○ 内払金請求

以前は、自賠責保険にも仮払金に類似する制度として「内払金」というものがありましたが、平成20年に廃止されています。そこで、現在、内払金請求は相手方加入の任意保険会社にするしかありません。支払の対象となるものは、基本的に治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害等の損害に限られています。この内払請求は、自賠責保険に対する仮渡金制度とは異なり、法令で定められた制度ではなく、任意保険会社の独自の判断に委ねられているものです。したがって、相手方加入の任意保険会社に内払金を求めたとしても必ず支払われるとは限らない不確実なものといえますが、休業損害が長期間生じているような場合には支払われるケースが多いようです。通院や休業が長期間に及ぶ場合には請求を試みるとよいでしょう。

 

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2016.02.12更新

交通事故被害に遭われたときは、加害者(加害者加入の保険会社)から損害賠償してもらうのが通常ですが、ひき逃げや相手方が無保険の場合、加害者と争っている場合など、何らかの理由によって加害者側からスムーズに損害を賠償してもらえないケースもあります。そのような場合は、まず利用できる保険はないかを必ず確認するようにしましょう。

 

 〇 労災保険

勤務中や通勤中に交通事故被害に遭った場合には、労災保険が適用される可能性があります。労災保険が使える場合、ご自身にも過失がある場合であっても、過失相殺されることなく治療費や休業損害(平均賃金の60%に相当する額+休業特別給付金と して平均賃金 の20%相当額)を支払ってもらえるため、過失割合に争いがある場合にはメリットが大きいといえます。ただし、労災保険から休業損害として支給されるのは、平均賃金の60%に相当する額と特別給付金として支給される平均賃金の20%分を合わせた80%にとどまります。

基本的に、損害の二重取りは許されないため、労災保険金を受給した後に相手方に損害を請求する際には、損害額から受給した労災保険金が差し引かれることに なる(これを「損益相殺」といいます。)のですが、特別給付金については、損益相殺されることはありません。8割分の休業補償を受けた場合であっても、損害額から差し引かれるのは6割分にとどまり、残りの4割分を加害者側に請求することができるのです。つまり、被害者としては、結果的に平均賃金の120%に相当する額を受給できることになります。さらに、交通事故が原因で後遺障害が残った場合は、その障害の程度に応じ、「障害補償給付」、「障害特別支給金」が支給され、重度の後遺障害の要件を満たす場合には、「障害補償年金」が支給され、将来の生活費に充てることが可能です。

労災保険が適用される事案であるにもかかわらず、「会社に労災は使えないと説明された」、「上司から労災を使わないでほしいと頼まれた」として、労災保険を使わない方もいらっしゃるのが現実です。しかし、労災保険を利用するメリットは大でありますので、困ったら、労働基準監督署や専門家に相談されることをお勧めします。

 

〇 人身傷害(補償)保険

人身傷害(補償)保険は、人身事故で被った損害について、過失割合にかかわらず基準に応じた額が支払われるというものです。自らにも過失がある場合、自己の過失割合分については、加害者側に損害賠償請求をすることができません。しかし、ご自身で加入の保険に人身傷害(補償)保険が付いていれば、加害者側に補償してもらえなかった自己の過失割合分を各保険会社が定める基準の範囲で補填してもらうこと ができるのです。また、当事者間で過失割合に争いがあり、加害者側保険会社が対応を拒んでいる場合なども、人身傷害(補償)保険があればスムーズな支払い をしてもらうことが可能です。

 

 〇 搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は、交通事故により運転者や同乗者が死傷したとき、入院・通院日数、または部位症状別に定額の保険金が支払われるという保険です。ケガに関する保険金の支払われ方には、「日数払い」と「部位症 状別払い」の2つの種類があります。支払金額は、症状に応じて10万円・30万円・50万円・100万円と金額としては大きいものではありませんが、当面の生活費を捻出する方法として活用するとよいでしょう。

 

その他、ご加入の傷害保険、医療保険、生命保険、各種共済の内容によっては、一定額の保険金が支払われる場合があります。

 

ご自身の保険証券でなく、ご家族の保険証券についてもきちんと確認しましょう。

 

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2016.01.15更新

交通事故の被害に遭われた方の中には、怪我をして仕事を休んだり、事故が原因で退職を余儀なくされたりしたことで収入が途絶え、生活に困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。怪我の内容・程度によっては、治療期間、休業期間が長期化し、それに比例して経済的な負担が増していくことも少なくありません。

 

相手方が任意保険会社に加入している場合には、通常、その保険会社が治療期間中の治療費の支払いや休業補償をしてくれることになりますが、怪我や過失割合の内容等について争いがある場合においては、保険会社が治療費の支払いや休業補償をすることを拒むこともあり得ます。では、交通事故被害に遭い、お金に困る状況に追い込まれた場合、どうしたらよいのでしょうか。

以下、事故後の治療費や生活費を捻出する方法をご紹介いたします。

 

(1) ご自身が加入している保険を活用する

(2) 相手方保険会社に内払金を請求する

(3) 自賠責保険に仮渡金請求をする

(4) 自賠責保険に被害者請求をする

(5) 裁判所に仮払い仮処分の申し立てをする

(6) 生活資金貸付制度を利用する

 

いくつかの方法を挙げましたが、いずれの方法も利用する上での要件や基準があり、全てのケースで有用というわけではありません。ご自身のケースでは、どの方法をとることが可能か、どの程度の費用を賄えるかをきちんと検討することが重要です

 

しかし、きちんと検討するためには、制度、手続、法律、保険等、専門的な知識が不可欠なため、ご自身で判断することは極めて難しいといえるでしょう。最善の方法を選択するためには、専門家にご相談されるのが一番だと思いますが、より詳しい内容を知りたいという方のために、次回から上に挙げた各方法について説明をしていきたいと思います。  

 

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交通事故で考えられるトラブルを解決する福岡の弁護士コラム

交通事故トラブルの専門家である福岡の「弁護士法人 あずま綜合法律事務所」は、相談者様にとって役立つ情報を提供しています。例えば、交通事故に遭ってしまった場合、高次脳機能障害になってしまうケースもあります。この際、記憶や学習に悪影響が生じ、日々の生活や仕事に支障をきたしてしまうのです。
また、高次脳機能障害に限らず、交通事故によって怪我や障害を引き起こしてしまうことは少なくありません。被害者からすると、治療費やその後の生活費が必要になります。示談交渉や調停・訴訟など、ワンストップで対応できるので気軽にご相談ください。