2017年04月23日

衝撃がさほど大きくない事故で左肩関節打撲の傷害を負った50歳男子に12級6号の左肩関節機能障害を認めた事案~判例ニュース

 【横浜地裁平成27年12月17日判決】(自保1968号127頁)

乗用車を運転、停止中にクリープ現象で前進した被告乗用車に追突された50歳男子原告の受傷につき、「原告車両及び被告車両の損傷状況からすると、本件事故による衝撃の程度は、必ずしも大きくなかったと考えられるが、クリープ現象による接触程度の軽微なものであったとはいえず、シートベルトが左肩に食い込んで局所的に外力が及んだことからすると、左肩腱板損傷の受傷機転として合理的といい得る」とし、「原告の左肩腱板損傷及びこれに伴う左肩関節の機能障害は、本件事故によるものと認められる」と認定した。

 

 [コメント]

この事案では、被告は、主に次の点を理由に、原告の左肩腱板損傷・左肩関節機能障害は本件事故によるものではないと主張しました。

本件事故は、クリープ現象によって前進した被告車両が原告車両に追突したにすぎず、衝撃の程度は軽微であったといえるから、原告の左肩腱板損傷が生じたとは考え難い。

左肩の痛みが本件事故直後にはなく、その後徐々に憎悪していることからすると、左肩腱板損傷は外傷によるものではない。

原告の症状は、慢性的な五十肩によるものと考えられ、原告の左肩腱板損傷は既往のものである。

 

裁判所は、上記被告の主張に対し、次のように認定し、原告の左肩腱板損傷及び左肩関節の機能障害は本件事故によるものと認められると判断しました。

について

即座にブレーキをかけてクリープ現象を止めることができたはずであるにもかかわらず、漫然と追突に至ったというのは不自然であり、クリープ現象で前進して追突したに過ぎず衝撃は軽微であったとの被告の主張は採用し難い

について

初診時の診察が診察時間の終了間際に急いで行われたことがうかがわれ、その際の診療記録に左肩の痛みについて主訴の記載がないからといって本件事故直後に左肩の痛みがなかったとも認め難い

について

左肩の症状について、短期間のうちに一定の改善がみられたことは、これが加齢及び業務に起因する慢性的な既往症であったこととは整合しにくい

 

交通事故による後遺障害が争われる事案においては、上記のように、事故態様・事故(衝撃)の大きさ、症状発現時期の遅れ、既往症が争点となることがよくあります。裁判においては、双方の主張が相反することもすくなくありません。原告・被告は、自らの主張を理論武装させ、証拠等を用いて立証していくことになります。答えを導く明確な証拠がない場合には、原告・被告の主張・立証のどちらに重きをおくかによって結論が異なる可能性があり、裁判官によって異なる判断がなされることもあり得ます。

本件においては、比較的原告に有利な認定がなされているという印象を受けますが、既に自賠責の事前認定において、後遺障害12級6号に該当するとの判断がなされていたことも少なからず裁判所の判断に影響を与えたのかもしれません。

 

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