2020年03月30日

乗用車に衝突され死亡した直腸がん等ステージⅣの75歳男子の平均余命年数を3年と認定し2年間40%の生活費控除で稼働逸失利益を認め4割の素因減額を適用した事例

【大阪地裁令和元年9月4日判決】(自保205824頁)

 

〔事案の概要〕

直腸がん等に罹患しステージⅣの75歳男子会社代表取締役の亡Aは、高速道路上を67歳原告Xが同乗し、この原告Wが運転する普通乗用車に同乗して走行中、後方から走行してきた飲酒して無免許の被告Yが運転し、被告Uが同乗する、被告Z所有の普通乗用車に衝突され、両側急性硬膜下血腫等の傷害を負い、21日後に死亡したため、相続人の原告らは約5500万円等を求めて訴えを提起した。

 

〔判決の要旨〕

①「平成28年における75歳男性の平均余命は12年であるところ、Aは、本件事故時点において、直腸がんが肺及び肝臓に転移した状態(ステージⅣ)であり、ステージⅣまで至った直腸がんを含む大腸がん患者の3年生存率が、実測生存率で28.5%、相対生存率で303%であることからすると、Aが、本件事故後も12年にわたり生存していた高度の蓋然性があると認めることはできないものの、本件事故がなくても1年や2年で死亡したことを裏付けるに足りる的確な証拠もなく、3年生存率が約3割であり、本件事故時点ではその病状は安定していたことからすれば、Aの余命は少なくとも3年はあったものと推認される」として平均余命年数3年と認定した。

②Aの素因減額につき、「Aが、本件事故当時、直腸がんの肝臓及び肺への転移やこれに伴う肝機能及び肺機能の低下に加え、心房細胞により血栓ができやすく抗凝固剤であるワーフェリンの服用が必要な状態でなければ、Aは、適切な治療を受ければ平成289月上旬に死亡することはなかったものと推認される」等の理由から、4割の素因減額を適用した。

 

[コメント]

交通事故以外に後遺症や死亡に影響したと思われるような既往症が被害者にあった場合、逸失利益の算定や素因減額が問題となることがあります

素因減額とは、被害者が事故前から有していた既往症や、身体的特徴、心因的な要因といった「素因」が、事故による損害に寄与し、損害を拡大してしまうといった場合に、被害者の素因を斟酌して損害賠償額を減額することをいいます。

既往症が後遺症や死亡にどの程度影響したか、素因減額をすべきか、素因減額をすることが相当として、減額を行う割合をどの程度にすべきかの判断は極めて難しいものです。医学的見解、過去の裁判例を踏まえた上で、個別具体的な事情を検討する必要があります。

 

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