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両耳にイヤホンを装着して音楽を聴きながらランニング中、被告車のクラクションにも気づかず、車道に大きく進入した原告に4割の過失を認めた事案
【さいたま地裁平成30年9月14日判決】
〔事案の概要〕
男子アルバイト等の原告は、片側1車線道路路側帯を両耳にイヤホンを装着して音楽を聴きながらランニング中、車道に進入したところ、後方から直進進行してきた被告運転の乗用車に衝突され、外傷性頚椎ヘルニア、頚椎捻挫等の傷害を負い、3日入院、187日実通院し、握力低下、両手指のしびれ、後頚部痛から14級9号後遺障害を残したとして損害賠償を求める訴えを提起した。
原告側は、路側帯をランニングしていた原告が、路側帯上の電信柱を避けるために車道に若干進入した際、後方から直進進行してきた被告車両に跳ねられたというもので、車両側端の歩行者と四輪車の衝突事故であり、加えて、本件事故現場が住宅地であること、被告には、車道内に原告が進入したのを認識し、あるいはこれを看過して、漫然と20キロメートルを優に上回る速度で被告車両を走行させて、本件事故を惹起したという著しい過失があると考えられるから、原告に過失はなく、少なくともその過失が5%を超えることはない、と主張した。
〔判決の要旨〕
被告は、歩行者である原告の動静に違和感を覚え、また、クラクションに気づいていない様子であることも認識しながら、十分に徐行することなく、その側方を通過しようとし、結果、車道内に進入した原告を回避することが出来ず、被告車両を原告に衝突させたとして、被告に過失があると認定した。
他方、本件事故の態様は、通行するに十分な幅員を有する路側帯をランニングしていた原告が、両耳にイヤホンを装着して音楽を聴いていたため、被告車両のクラクションによる注意喚起に気づかず、被告車両が直近に至った時点で、後方を確認することなく車道内に大きく進入し、センターライン付近に至って被告車両と衝突したというものであって、原告にも相当な落ち度があり、被告の回避可能性は減退していたことを考慮し、本件事故における過失割合は、原告を40%、被告を60%と認めるのが相当である、とした。
[コメント]
歩行者と四輪車との事故の場合、交通弱者である歩行者の過失が小さくなるというのが基本的な考え方です。
本件のように歩車道の区別のある道路(歩道や通行に十分な幅員を有する路側帯のある道路)における事故の場合、
歩行者が車道側端を歩行していた際に車両に衝突された場合の歩行者の過失は20%、
歩行者が車道側端以外(道路の中央)を歩行していた際に車両に衝突された場合の過失は30%となります
(「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ№38)」。
裁判所は、原告が「車道内に大きく進入し、センターライン付近に至って被告車両と衝突した」と認定しましたので、基本過失割合は30%となります(本件事故現場は住宅地とのことですので、上記過失割合から5%、原告の有利に修正がかかる可能性はあります)。
ところが、裁判所は、本件事故における原告の過失は40%と認定しました。それはなぜでしょう。
「両耳にイヤホンを装着してクラクションによる注意喚起に気づかなかった」、「後方を確認しなかった」という事実を原告側の落ち度(著しい過失)と認定したからです。
以前、スマホを操作しながら自転車に乗り、女性に衝突して死亡させた事故があり、ながら運転により加害者になる危険性について大々的に報道されたことがありました。
本判決からいえることは、加害者ではなく、被害者の場合でも、両耳にイヤホンをするなどして自分の世界に浸り通行上の注意を怠っていると過失と認定され得るということです。
街に出るとイヤホンをたり、スマホを操作しながら通行している方を多くみかけますが、これは事故を誘発しかねない危険な行為です。
事故防止のためにも、日頃から注意することを心がけましょう。
交通事故に関するお悩みは、経験豊富なあずま綜合法律事務所にご相談ください。
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弁護士法人 あずま綜合法律事務所
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