2020年01月28日

軽微追突された52歳男子の接骨院等での施術の必要性は認められないとし事故との因果関係のある治療期間は3ヶ月と認定した事案

【東京高裁令和元年821日判決】(自保205389頁)

 

〔事案の概要〕

52歳男子運転手のXは、平成28523日午前812分頃、さいたま市内の信号交差点で普通貨物車を運転して赤信号停止中、後方に停止していたW運転、Y会社所有の普通貨物車がクリープ現象により前進して追突され、頚椎捻挫、右肩部挫傷及び腰部挫傷等の傷害を負い、220日間通院したとして、既払い金120万円を控除し832204円を求めて訴えを提起した。

1審裁判所は、Xの事故と因果関係のある治療期間を5か月間と認め、接骨院の治療費約25万円を認定した。

 

〔判決の要旨〕

普通貨物車を運転して信号停止中、Y普通貨物車に追突され、頚椎捻挫等の傷害を負い、220日間通院したとする52歳男子Xの受傷につき、Xの主治医であるD医師は、Xについて接骨院等での施術を受けることを妨げることまでしなかったものの、接骨院等での施術を必要であると考えていたと認める証拠はないのであるから、接骨院での施術が傷害の治癒のため必要で、有効であったと認めることはできないと否認した。また、本件事故によりXが受けた衝撃が軽微なものにとどまること、初診時に他覚的な所見が認められていないこと、Xが本件事故の後仕事を休むことなく、トラックによる運送や積み下ろしの仕事を継続していること、外傷性頚部症候群の症例784例の分析研究によれば、平均治癒期間が73.5日で中央値が49日程度とされることを併せ考慮すれば、Xの傷害について、本件事故と相当因果関係のある治療期間は3ヶ月とするのが相当であると判断した。

 

[コメント]

今まで多くの交通事故事案をみてきましたが、保険会社とトラブルとなるケースでよくあるのが、「事故の大きさに比して、通院が長い」という事案です。

自賠責保険は被害者救済のための制度であるため、比較的緩やかに因果関係が認められる傾向にあり、クリープ現象により軽微追突された事案においても後遺障害149号が認定されたケースもあります。

しかし、裁判では、様々な事情を総合的に考慮して施術の必要性、有効性、施術内容の合理性、施術期間・施術費の相当性等が判断されることになります。

本件では、接骨院での治療につき医師の同意がないこと、被害者に他覚的所見が認められていないこと、被害者が事故後も肉体労働に就いていたこと等が考慮され、実際の治療期間は7ヶ月超であったのに対し、本件事故と相当因果関係のある治療期間は3ヶ月と認定されました。

 

 

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