2020年04月30日

49歳女子の自賠責14級認定の頚部痛等を他覚的所見が認められると12級後遺障害を認定した事案

【福岡地裁令和元年9月17日判決】(自保206054頁)

 

〔事案の概要〕

49歳女子同居の母を介護する家事従事者の原告は、路上で普通乗用車を運転して赤信号停止中、被告運転の普通乗用車に追突され、頚椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負い、102日実通院し、自賠責149号頚部痛及び頭痛等、同149号腰痛等の併合14級後遺障害認定も、頚から肩にかけての痛み及び手までのしびれ等が残存し1213号後遺障害を残したとして、既払金約195万円を控除し約1200万円を求めて訴えを提起した。

 

〔判決の要旨〕

「本件神経症状のうち頚部痛及び上腕から手のしびれについては、C5/6及びC6/7の椎間板突出との他覚的所見があり、一定期間での寛解が具体的に見込まれるといえないため、自賠法施行令別表第二1213号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に当たるものと認めるのが相当であり、これは、本件事故との因果関係のあるものと認められる」と1213号を認定した。

 

[コメント]

自賠責(損保料率算出機構)において、むち打ち損傷で後遺障害1213号の認定を受けるためには、「局部に頑固な神経症状を残すもの」であることが必要です。

どのような症状があれば「頑固」な神経症状にあたるのかという明確な基準は存在しませんが、実務上12級13号に認定されるためには、その症状が「医学的に証明されること」すなわち、医学的根拠に基づいた他覚的所見によって証明されることが条件とされています。

他覚的所見として重要なのは、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像検査などの画像所見で、当該画像所見と矛盾しない神経学的所見の有無も考慮されます。

むち打ち損傷で12級13号が認定されるケースは非常に少なく、ハードルが高いのが現状です。

 

当事務所でも多数のむち打ち損傷案件を扱ってきましたが、自賠責に後遺障害申請をして1213号が認められたのは「神経根の圧排所見」が認められた場合のみで「椎間板の突出」という他覚的所見のみで1213号が認定されたケースはありません。

自賠責においては、画像上「脊髄・神経根の圧排所見」が認められ、その「圧排部分に対応した神経学的異常所見が得られている」ことが重視されているものと思われます。

 

本判決は、圧排所見はみられてないものの、症状固定時において頚部痛等の神経症状が残存しており、MRI検査の結果、C6/7及びC5/6において「椎間板突出との他覚的所見」が認められるところ、本件MRI検査で椎間板突出が認められる頚椎に対応する神経根と、本件神経症状のうち頚部痛及び両腕から手の知覚障害(しびれ)との間には対応関係があること等を理由に1213号を認定しました。

 

本件事故は、時速10㎞程度の追突事故であったことから被告は、本件事故の態様から椎間板突出が生じ得るとは考え難いなどと主張しましたが、本判決は「本件事故によって原告に加わった力がごく軽微であり、およそ椎間板突出に影響を及ぼし得ないほどの事故態様であったことを認めるに足りる的確な証拠はない」と判断したことも特筆したい点です。

 

本判決のように、裁判をすれば自賠責において認定された等級よりも高い等級が認められる場合があります。

自賠責保険の認定内容に納得ができないときは、ぜひ交通事故問題に強いあずま綜合法律事務所にご相談ください。

 

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