2017年01月25日

二輪車転倒・衝突事故につき外傷後ストレス障害を認め5年間5%の労働能力喪失で逸失利益を認定した事案~判例ニュース

 【さいたま地裁平成27年12月25日判決】

46歳男子会社代表の原告は、自動二輪車を運転して進行中、一時停止道路から進入してきた被告運転の普通乗用車を避けようとして転倒、衝突し、頚椎捻挫、全身打撲、顔面擦過傷等の傷害を負い、外傷性ストレス障害等の14級9号に相当する精神障害が残存したとして訴えを提起した。

裁判所は、「本件事故の際に被告車両の車輪が原告の頭部を踏み越えた事実自体がなくとも、原告が、被告車両の車輪の経路の間近で転倒していて、ヘルメットが被告車両の左後輪の前に挟まりながらひきずられて破損する『バリバリバリバリッ』という音を聞いたことからすると、少なくとも原告の認識としては、本件事故は、原告の頭部を被告車両の車輪に踏まれる危険を伴った、生命に関わる重大な事故といえ、外傷後ストレス障害の治療期間についても相当因果関係を認める。」と認定し、賃金センサス男子学歴計同年齢平均を基礎収入に、5年間5%の労働能力喪失で後遺障害逸失利益を認めた。

 

[コメント]

医師に「外傷性ストレス障害」いわゆるPTSDと診断された場合であっても、必ずしも賠償の対象となる後遺障害として認定されるわけではありません。賠償実務上、PTSDが後遺障害として認められるには高いハードルがあり、多くの裁判例がPTSDを否定しています。医師の診断と裁判所の判断とに乖離があるのは、医師は患者が事故後の精神状態の不安定を訴えれば治療の必要性があるとしてPTSDと診断する、つまり自覚症状のみで診断してしまう傾向があるのに対し、裁判では事故発生の状況と傷害の内容・程度などを総合的に考慮し、事故との因果関係を十分に斟酌するからであると思われます。本判決も「生命に関わる重大な事故」と認定しているように、裁判においては、とくに死に比肩できる外傷体験があったか、当該事故によって精神的変調をきたしてもおかしくないほど事故が重大で凄惨であったかという事故起因性が重視されるといえます。

 

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