2016年11月23日

軽微衝突により後遺障害の残存を否認した事案~判例ニュース

 【熊本地裁人吉支部平成28年1月27日判決】(自保1969108)

 

店舗駐車場内で後退車両に接触され受傷した原告は、残存する腰の疼痛は、既往症である脊柱管狭窄症と本件事故による傷害に起因するというべきであり、1213号所定の「局部に頑固な神経症状をのこすもの」に該当すると主張しました。

しかし、裁判所は、「本件事故は、接触こそ伴ったものの、その衝撃の程度は(省略)ごく軽微なものであったと証拠上見ざるを得ない。かかる事故態様からしても、原告が指摘するところの多様で頑強な症状が発症し、残存したとはにわかに認め難い」として、後遺障害の残存を否定しました。

 

[コメント]

骨折・脱臼などの他覚的所見がない後遺症がどの後遺障害等級に該当するか否かを判断するに際しては、残存する自覚症状のみでなく、事故態様、診断・検査結果、症状経過などの諸事情が総合的に考慮されます。他覚的所見がなければ、被害者が訴える自覚症状が詐病でないかを判断することが難しいため、裁判では事故態様、とくに衝撃の大きさを重視しているものが多いように思われます。つまり、事故後に重い後遺症が残存し不自由な身体になったとしても、事故態様が軽微であれば、事故がその重い症状の発生原因とは考えがたいとして後遺障害の残存を否定される可能性が高くなります。

注意していただきたいのは、後遺障害の残存を否定されるだけでなく、治療内容や治療期間の必要性・相当性についても否定される可能性があるということです。治療内容や治療期間が否定されると、治療費の賠償が受けられなくなる、もしくは減額されることになりかねません。

軽微事故だからといって怪我が小さく済むと一概に言うことはできませんが、事故態様の軽微性が相手方との交渉や裁判において争点となり、不利な事情となることは間違いないといえるでしょう。

 

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