2019年02月18日

3級高次脳機能障害を残す4歳児の後遺障害逸失利益及び将来介護費用を定期金賠償で認定した事案

【札幌高裁平成30629日判決】(自保2028号 1頁)

 

[事案の概要]

4歳の男児Xが市道を歩行横断中、大型貨物車に衝突され、脳挫傷、びまん性軸索損傷等から自賠責3級3号認定の高次脳機能障害を残したため、両親が、後遺障害逸失利益及び将来介護費用の定期金賠償での支払いを求めて訴えを提起した。

双方控訴の2審裁判所は、Xの後遺障害逸失利益及び将来介護費用を1審同様に定期金賠償による支払いで認めた。

 

[コメント]:「定期金賠償」とは、 たとえば交通事故で発生した損害の賠償方法として、一回の支払いで賠償する「一時金賠償」に対して、将来にわたって定期的に分割で賠償することをいいます

たとえば、車椅子の買い換え費用、車の改造費用、施設の入所費用などの「将来介護費用」は、将来的に変動する可能性が高く、現実に必要とする金額の算定が困難であるとして、定期金賠償という形で支払いを命じる判決も散見されます。

今回は、将来介護費用だけでなく、「後遺障害逸失利益」についても定期金賠償での支払いを認めた点で貴重な判決といえます。

なお、本判決は、「後遺障害逸失利益」についても定期金賠償認めるにあたって、

「①本件における後遺障害逸失利益については将来の事情変更の可能性が比較的高いものと考えられることや、

 ②被害者側が定期金賠償によることを強く求めていること、

③これは後遺障害や賃金水準の変化への対応可能性といった定期金賠償の特質を踏まえた正当な理由

によるものであると理解することができること、

④本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めても、

  保険会社の損害賠償債務の支払管理等において特に加重な負担にはならないと考えられること

などの事情を総合考慮」しました。

 

定期金賠償には、事情の変更(例えば物価の上昇)に対応可能できる、中間利息を控除されないといったメリットがある一方、

逆に事情(被害者の死亡や必要な費用の減少)によって減額される可能性もあります

 

定期金賠償にすべきか否かは慎重な検討が必要ですので、お困りの方は、ぜひあずま綜合法律事務所にご相談ください。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
弁護士法人 あずま綜合法律事務所
http://www.jiko-fukuoka.jp/
住所:福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号
上ノ橋ビル3階
TEL:092-711-1826
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2019年01月10日

歩行中に被告普通貨物車に衝突され約8年11ヶ月後の症状固定を主張する24歳男子の中心性頸髄損傷等は約1年2ヶ月後に症状固定とし消滅時効完成により請求を棄却した事案

【東京地裁平成30年6月6日判決】(自保2028号 87頁)

 

[事案の概要]

24歳男子の原告は、平成20年1月7日、横断歩道を青信号で歩行横断中、被告運転の普通貨物車に衝突され、中心性頸髄損傷等の傷害を負い、2日入院、19日実通院し、平成21年2月26日症状固定の診断を受けるも、平成28年11月21日の症状固定を主張し、12級13号後遺障害(自賠責非該当)を残したとして、既払金を控除し内金1000万円を求めて訴えを提起した。

原告は、平成28年11月21日を症状固定とする主張に沿うC病院整形外科の医師が同年12月19日にした後遺障害診断を証拠とした。

 

[判決の要旨]

「原告は、平成21年2月26日にB大学病院脳神経外科に通院してから平成28年11月21日にC病院整形外科に通院するまで、本件残存症状の治療ないし経過観察等のために医療機関に通院したことはないことが認められるから、C病院整形外科の医師が平成28年12月19日にした後遺障害診断は、7年以上にも及ぶ通院空白期間というべき上記期間中の原告の本件残存症状の経過ないし推移等を客観的に把握した上でなされたとは認めがたい。」、「C病院整形外科の医師は、原告の残存症状の症状固定日が平成21年2月26日ではなく、平成28年11月21日であると診断した医学的理由ないし根拠を明らかにしていない。」として、平成28年11月21日の後遺障害診断を否認し、後遺障害診断日である平成21年4月2日を消滅時効の起算点として、時効完成により請求を棄却した。

 

[コメント]:後遺障害による損害は、基本的には症状固定日から3年で消滅時効にかかるとされています。

「症状固定」とは、簡単に言うと、「これ以上適切な治療をしても症状の改善が見込めない状態に至ったこと」を意味します。そして、症状固定に至ったかどうかを判断することができるのは、医師です。

しかし、医師が判断した症状固定日が必ずしも常に裁判で妥当と判断されるとは限りません。あくまでも、症状固定日は、「医師の適切な医学的判断」によるべきなのです。

本判決は、たとえ医師が後遺障害診断をした場合であっても、その判断が医学的理由ないし根拠に基づいたものでなければ否認され得るということを明らかにしたものといえます。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
弁護士法人 あずま綜合法律事務所
http://www.jiko-fukuoka.jp/
住所:福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号
上ノ橋ビル3階
TEL:092-711-1826
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

PageTop