2018年10月11日

右膝関節機能障害(12級)を残した60歳有職主婦の休業損害を家事労働90~50%の稼働で認定した事案

【神戸地裁平成28年6月15日判決】(自保1984号59頁)

2年間の間に5回の入院を経て自賠責併合12級右膝関節機能障害等を残す60歳有職主婦の休業損害を算定するにあたり、その家事労働につき、「入院日数(160日)は100%の労働制限を認める」とし、その後の通院期間74日は90%の労働制限を、その後の通院期間104日間は70%の労働制限を、さらにその後の331日間は50%の労働制限を認めるのが相当であると評価して、賃金センサス女性学歴計年齢別平均賃金を基礎収入に休業損害を認定した。

[コメント]

一般に、休業損害は、「収入日額×休業日数」という計算方法で算出します。

主婦の場合、現実の収入がないため、休業損害がないと思われがちですが、労働の対価の対象となる家事労働を行っているということで主婦の休業損害も認められており、「収入日額は」、平均賃金(賃金センサス)を基準に決められます。

また、主婦の場合、休業・欠勤というものが存在しないため、「休業日数」についても問題となりがちです。判例は、主婦の休業日数について、「受傷のため、家事労働に従事できなかった期間につき認められる」(最判昭和5078日)としていますが、実際には、入院日数や通院の実日数を基礎に休業損害を算定することになります。しかし、例えばむち打ちを負った主婦につき、「収入日額×通院実日数」で求めた満額を休業損害として請求すると、相手方の保険会社から「通院したとしても100%家事ができないわけではないから減額すべきだ」と反論される可能性が高くなります。

本判決は、事故日から症状固定日までの間にどの程度家事労働が制約されていたかを考慮し、段階的に休業損害を算定する方法(逓減方式)を採用しました。この方法によれば、傷害の内容・部位・程度、症状経過、治療経過、後遺障害の内容・程度、家事労働の内容等に照らして、どのくらいの期間にどのくらいの家事労働の制約があったかを認定することになるため、より具体的かつ説得的に休業損害を主張できるといえます。

主婦は、会社員等と異なり、現実の減収を立証することができないため、相手方との交渉・裁判においては、いかに事故による怪我で家事労働を制約された損害を被ったかを説得的に主張・立証するかが重要となります。是非、専門家である弁護士にご相談ください。

 

 

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