2018年11月19日

ドリフト走行から暴走乗用車が集団登校中の小学生らの列に衝突し、非接触のXらに非器質性精神障害の発症を認めた事案

【京都地裁平成30年3月28日判決】(自保2025号86頁)

[事案の概要]

 11歳男子小学生のXは、午前8時頃、信号のない丁字路交差点を弟、他の児童らと集団登校中、ドリフト走行に失敗して制御不能になり、暴走した被告運転の乗用車が歩道上のXら小学生の列に衝突(衝突された児童は外傷性クモ膜下出血等受傷)した。Xらは非接触も左膝打撲傷、左足関節打撲傷、左膝足関節皮膚欠損、左手指打撲傷等の傷害を負い、その後、急性ストレス反応、PTSDの状態へ移行して症状固定まで約40箇月通院した。

 

裁判所は、「Xの本件事故後の状況、診療経過および本件事故の態様による精神的苦痛の程度(高速の自動車が飛び込んでくるという怖い体験をした上、同行者が血を流して倒れているなどの惨状を目の当たりにした)を踏まえれば、Xは、本件事故により、非器質性精神障害を発症したものと認める」とした。

 

[コメント]

非器質的精神障害」とは、脳組織に物理的な損傷がないが異常な精神状態が発生していることをいいます。代表的なものとしては、PTSDうつ病などが挙げられます。

交通事故後、PTSDやうつ病などの非器質的精神障害と診断されたとしても、それだけで、交通事故による「後遺障害」として、損害賠償の対象となるわけではありません。

後遺障害としての損害が認められるためには、事故と症状の因果関係が認められることを前提に、厚労省が通達した労災の「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」に該当する必要があります。

因果関係が認められるかは、事故状況、受傷内容、障害の発現時期、専門医の受診時期、他の要因の有無等を総合的に考慮して判断されることになります。

今回の事案は、非接触事故(X自身は被告車に衝突されていない)という事故状況で、傷害内容も重度のものではありませんでしたが、裁判所は、「Xに事故直後から食欲減退、睡眠障害、夜尿等があり継続的にカウンセリングを受けたこと等に加え、高速の自動車が飛び込んでくるという怖い体験をした上、同行者が血を流して倒れているなどの惨状を目の当たりにした」という事情を考慮し、本件事故と非器質的精神障害との因果関係を認めました。

 

非器質的精神障害が後遺障害として認定されるためには、上記のとおり、「因果関係が認められること」、「障害等級認定基準に該当すること」が必要です。また、専門医で1年以上適切な治療を受けることも重要となってきます。

このように、自賠責や裁判所に非器質的精神障害を後遺障害として認めてもらうには、いくつもの条件をクリアする必要がありますので、PTSDやうつ病で適切な賠償を受けたいと思うのであれば、専門知識をもった弁護士に相談されることをおすすめします。

あずま綜合法律事務所では、非器質的精神障害に関する後遺障害申請のサポートも親身に行っておりますので、是非お早めにご相談ください。

 

 

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