2019年10月03日

路肩駐車中に被告普通貨物車に追突された男子原告の左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷等との因果関係を認め症状固定日を1年6ヶ月後と認定した事案

【大阪地裁平成31124日判決】(自保204675頁)

 

〔事案の概要〕

男子原告は、平成2812日、乗用車を運転して路肩に停車中、被告運転の普通貨物車に追突され、左膝内側半月板損傷、左膝膝蓋骨軟骨損傷等の傷害を負い、約16ヶ月通院したとして、既払い金220002円を控除し1793907円を求めて訴えを提起した。

被告は、原告は、平成29321日、C病院において左膝内半月板損傷の診断を受けているが、この診断は7ヶ月に及ぶB病院への通院を終了した平成2882日から7ヶ月以上も経過した時期に突然されたものである。そのため、左膝内半月板損傷が本件事故によるものとは到底考えられない。原告は、本件事故当日の平成2812日、Bレントゲン検査を受けた結果、骨折は認められず、同年14日の診断においても特に異常なしとされている。そのため、診断書上の傷病名も左膝関節打撲のみである。編国のB病院への通院頻度は、月に1回か2回にすぎず、処置は沈痛消炎剤の処方のみである。といった事情は、原告が本件事故により左膝内半月板損傷の傷害を負っていないからにほかならないとして保険事故と左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷等との因果関係を争った。

 

〔判決の要旨〕

「原告に発症した左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷と本件事故との相当因果関係の有無について検討するに、2トントラックである被告車に追突されたことで、原告車のバンパーやクォーターパネルが損傷を受けたことからすると、本件事故の衝撃は決して小さいものとは評価できないこと、本件事故により、原告は左膝をダッシュボードにぶつけたこと、原告が本件事故当日から左膝の痛みを一貫して訴えていたこと、平成28年8月2日時点では、左膝関節痛については局所に頑固な疼痛が残存している状態であり、左膝については可動域制限が残存し、正座ができず、1時間の立位が困難であり、走ることもできない状態であり、同日時点の原告の症状は軽症とはいい難い状態であったことなどの事情は、原告に発症した左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷と本件事故との相当因果関係を推認させる事情となる」とし、「C病院でMRI検査が行われるまでの間、原告において、左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷を発症する原因となる具体的な出来事がないことに照らすと、原告は、本件事故により左膝打撲のみではなく、左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷を発症したと認められ、症状固定日は、C病院の最終通院日である平成29711日とする」と本件事故と左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷との因果関係を認め、症状固定日を約16ヶ月ごと認定した。

 

[コメント]

交通事故で怪我をした場合、ほとんどのケースでX-P(レントゲン)検査が施行されます。しかし、X-P検査は骨折の有無の判断には有用ですが、腱損傷等判断できない所見もたくさんあります。左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷もその一つです。本件では、受傷当初にB病院で受けたX-P検査で骨には異常がなく左膝関節打撲と診断され、それを前提にB病院での治療がなされた後、一度は治療となってしまいました。その後、C病院でMRI検査を受けた結果、左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷という所見が認められましたが、事故から7か月以上も経った時点でなされたものであったことから、保険会社はC病院での診断結果と治療を争う姿勢をみせたわけです。

もし、受傷当初にMRI検査を受け、きちんと左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷との診断を受け、適切に治療を受けていれば、このように裁判で争うことはなかったでしょう。

交通事故で適切な賠償を受けるためには、事故当初に適切な診断を受け、適切な治療を受けておくことが極めて重要です。

本件は、「この事故以外に原告が左膝内側半月板損傷及び左膝蓋骨軟骨損傷を発症する原因となる具体的な出来事がない」ということで、当該傷病と事故との相当因果関係が認められましたが、仮に事故後に転倒して通院した、肉体労務の仕事に就いているなどの事情があったような場合、必ずしもこのような判決内容になったとは限らないのです。

しかし、医学的知識や交通事故賠償上の問題に関する知識は乏しい被害者の方にしてみれば、診断結果や治療は医師、治療機関の判断に委ねざるを得ないケースも多いことでしょう。

交通事故問題の実績多数なあずま綜合法律事務所では、事故直後から丁寧にアドバイスをさせていただいておりますので、交通事故で怪我をしたらお早めにご相談ください。

 

 

 

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