2019年08月22日

12級14号外貌醜状等併合12級後遺障害認定の17歳兼業主婦の逸失利益を家事労働に間接的な影響が生じていると67歳まで5%の労働能力喪失で認めた事案

【名古屋地裁平成31123日判決】(自保204371頁)

 

〔事案の概要〕

17歳兼業主婦の原告は、被告運転の乗用車後部座席に同乗中事故に遭い、自賠責1214号顔面神経麻痺及び顔面・頚部瘢痕による外貌醜状、同149号左下口唇知覚異常及び知覚鈍麻から併合12級後遺障害の認定を受けた。

 

〔判決の要旨〕

後遺障害逸失利益算定につき、「原告は現在専業主婦として家事及び育児に従事しているところ、原告の上記症状は家事労働に直接影響するものではない、原告は、口元や頸部の瘢痕をみられたくないとの思いからマスクを着用して生活するなど対人関係に不安を抱えており、専業主婦であっても買い物等での外出や他者との会話を全く避けることはできない以上、日常的に心理的な負担を感じざるを得ないという意味で、家事労働について間接的な影響は生じている」とし、「原告は、症状固定時に18歳の若年者であったことから、本件事故に遭わなければ相当程度幅広い就労可能性があったものと認められるところ…(省略)」、「原告には、本件事故による後遺障害の影響によって対人関係に消極的になり、接客業等への就労可能性が一定程度制限されているほか、現在従事している家事労働にも心理的負担を感じるという意味で間接的な影響が生じているということができるから、かかる後遺障害に基づく逸失利益の発生を認めるのが相当である」とし、49年間5%の労働能力喪失で認定した。

[コメント]

後遺障害12級の場合の労働能力喪失率は基準上14%とされていますが、本判決は、将来の就労可能性に対する影響の程度及び家事労働に対しては直接的な影響は生じていないことに照らし、原告の労働能力喪失率は5%と抑制的に認定しました。

顔に醜状障害を残した被害者の後遺障害逸失利益については、直接仕事や就労可能性に影響を与えるものでなく、労働能力を低下させるとは認められないとして否認する裁判例も多くみられますが、本判決は「間接的な就労可能性と家事労働への影響」も労働能力を低下させるものとして逸失利益を認めました。原告の障害の内容がメイク等で隠すことがでないものであったこと(口の歪み)、原告がまだ17歳と若く、現在は専業主婦とはいえ、今後就労する蓋然性が高いこと等が考慮された結果と思われます。

醜状障害を残した被害者の後遺障害逸失利益については、顔面醜状の程度・場所(髪やメイクで隠すことができるか)、職業、年齢(将来の転職可能性)等を総合的に判断して認定されることになると思われ、これらの事情をいかに詳細に立証できるかが重要となります。

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