2019年07月03日

自賠責非該当も22歳男子消防士の左膝神経症状は職務に影響があるとして14級9号後遺障害を認定した事案

【京都地裁平成301112日判決】

 

〔判決の要旨〕

自動二輪車に搭乗して交差点を直進中、先行被告乗用車が左折したため、急制動したが衝突して、左大腿部挫滅創等の傷害を負い、自賠責非該当も14級9号左膝を神経症状を残したと主張する22歳男子消防士の原告の事案につき、原告の症状固定後の症状は、「さほど強くはなく、かつ、常時自発痛があるわけではないものの、左膝に痛みが生じることがあると認められる。そして、原告が消防士として火災、急所、救急等の出動をしていることに照らすと、通常人の勤務と比較して肉体上の影響があることが職務に影響を及ぼしやすいといい得。そうすると、原告にほとんど常時疼痛が残存しているとまでは認め難いが、職務上の支障が生じることは否定できない」とし、「原告の述べる痛みについては、C整形外科において診断されているとおり、創傷によるものとして医学的に説明可能なもの」として、「左大腿挫滅創に伴う左膝創部の圧痛等の症状について、149号「局部に神経症状を残すもの」に該当する」と149号後遺障害を認定した。

 

【コメント】

自賠責においては、交通事故による後遺症のうち、「局部に神経症状を残すもの」については、149号と認定されることになります。

そして、「局部に神経症状を残すもの」とは、「医学的に説明可能な神経系統又は精神の障害を残す所見があるもの」をいい、「医学的に証明されないものであっても、受傷時の態様や治療の経過からその訴えが一応説明つくものであり、故意に誇張された訴えではないと判断されるもの」については、「局部に神経症状を残すもの」として149号に認定される可能性があります。

自賠責保険の後遺障害認定は労災保険の認定基準に準拠しているところ、労災の基準上、「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」が14級とされており、「ほとんど常時疼痛を残すこと」は自賠責で149号を獲得する上で重要な要素となります。

本事案においても、22歳男子消防士の原告は、常時自発痛がなく、自賠責においては後遺障害非該当と認定されていました。しかし、京都地裁は「消防士」としての職務の特殊性、後遺症の職務への影響に鑑み、149号後遺障害を認定しました。

裁判所は、自賠責の判断に拘束されず独自の判断において後遺障害等級を認定することができますが、自賠責で認定された後遺障害等級を参考にするため、裁判でも同様の認定をする傾向にあります。

しかし、本判決は、自賠責の判断に縛られず、原告の職業や職務の内容、後遺症による職務への影響を考慮して149号後遺障害を認定し、柔軟な姿勢を示しました。

裁判をすれば、自賠責の後遺障害認定とは異なる判断を受けることができる可能性があるということですが、そのためには、必要な立証書類を整え、緻密な主張をすることが重要となります。

自賠責の後遺障害認定内容に納得できない、異議を申し立てたいという方は、交通事故問題に精通したあずま総合法律事務所にご相談ください。

 

 

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