2016年03月27日

ネットオークション事業を自営の男性の休業損害を算定するにあたり、賃金センサスの年齢別平均賃金を基礎とした事案~判例ニュース

 【京都地裁平成27年4月22日判決】(自保1951号141頁)

 

ネットオークション事業を営む29歳男子原告の休業損害につき、原告は、「本件事故による左膝打撲により、在庫管理等に支障を来したことが窺える」等から、「上記事情による収入は明らかでないものの、本件事故による受傷内容及び治療経過等に鑑み、平成23年賃金センサス男性高卒29歳の年収額を基礎とし、1か月の限度で休業損害と認める」と1か月分の休業損害を認定した事案。

 

コメント: 自営業者(事業所得者)の休業損害は、「現実の収入減があった場合に認められる」とされていますが、自営業者の方が事故による「現実の収入減」を立証することは容易ではありません。とくに、本件は、原告(被害者)の自営業としての従事期間が短く、基礎収入の根拠となる相当な資料(確定申告書、納税証明書等)を提出することができなかったうえ、ネットオークション事業という収入が不確定な性質上、現実の収入減を明らかにすることは極めて困難なケースでした。そこで、裁判所は、原告の学歴・年齢の男性の平均賃金(賃金センサス)を基礎に休業損害を算定しました。このように、現実の収入減や所得額の立証が困難な場合には、平均賃金を基礎に算定した一定の休業損害が認められる可能性がありますので、保険会社に休業損害の支払いを拒否された場合でも交渉、裁判を検討する余地はあります。もっとも、休業期間については、受傷内容や治療経過等を考慮して判断されるため、治療期間全てが休業期間として認められるとは限りません。本件では、症状固定日までの治療に6か月を要しましたが、休業期間として認められたのは1か月にとどまりました。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
弁護士法人 あずま綜合法律事務所
http://www.jiko-fukuoka.jp/
住所:福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号
上ノ橋ビル3階
TEL:092-711-1826
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

PageTop