交通事故により脳に重篤な損傷が生じた場合、「高次脳機能障害」という障害が生じることがあります。
「高次脳機能(認知)」とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能の総称で、病気や事故で脳が損傷されたために、認知機能に障害が起きた状態を、高次脳機能障害といいます。
歩行中やバイク・自転車の運転中の事故で頭部を強打した被害者に、この「高次脳機能障害」が生じることが多くみられます。脳の損傷自体は画像検査で発見することが可能ですが、認知行動や人格・性格の変化は一見しただけではわかりづらいため、病院で見落とされてしまうことも少なくありません。被害者の身近な方が意識して見守り、わずかな変化にも気付いてあげることが重要です。
交通事故で脳に傷害を負った後に、次のような症状や人格・性格の変化がみられ、生活への適応や対人関係に問題が生じていると感じたら、まず、「高次脳機能障害」を疑い、適切な対応をとりましょう。
【高次脳機能障害にみられる主な症状】
記憶障害
過去の出来事を思い出せなかったり、新しい経験や情報を覚えることができない。
(会話中に単語が上手く出てこない。通り慣れた道で迷う。忘れ物が多い。予定通りに行動できない。)
注意障害
物事にうまく集中することができない。
(気が散りやすい。一度に複数のことをすると混乱する。ミスが多い。)
遂行機能障害
論理的思考力、計画的な行動力、問題解決能力、自己分析能力の低下。
(指示や計画通りに行動できない。すぐにパニックになる。今までできてきたことができない・効率の低下。)
社会的行動障害
行動や感情を適切にコントロールすることができない。対人関係をうまく築くことができない。
(喜怒哀楽のコントロールができない。幼稚化。人格・性格・癖の変化。)
いかがでしょうか。被害者の方に上記の症状がみられたとしても、すぐに障害と結び付けて考える方は少ないのではないのでしょうか。事故前と比べて仕事の効率が下がったり、学校の成績が下がったりとしたとしても、入院期間が長かったから仕方ないな、と片付けられてしまうことも多いのです。今までとちょっと様子が違うな、と感じたら、それは「高次脳機能障害」のサインかもしれません。
次回に、「高次脳機能障害」が疑われた場合にどのように対応したらいいか、「高次脳機能障害」の後遺障害等級認定がどのように行われるかについてご説明いたします。
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