2016年08月25日

歯科開業医の休業損害について判断した事案~判例ニュース

 【東京地裁平成27年11月25日判決】(自保1966号121頁)

 

[事案の概要]

車の運転中に乗用車に追突された男子歯科開業医のXは、頚椎捻挫の傷害を負ったために、事故後の7日間は全日休業とし、2日間は短時間診療とすることを余儀なくされた。また、その後50日間は1時間の短縮営業を行った。

 

[判決の要旨]

「交通事故に係る事業者の休業損害を算定するには、基礎収入として事故前の申告所得額に固定費用を加算した金額を採用し、営業日数で割って1営業日当たりの所得を算出し、交通事故により休業した状況を、営業日数あるいはその休業割合に応じて換算するなどして、1営業日当たりの所得に応じて算出するのが相当である。」「Xが全日休業とした7日間は、前記所得の100%、短時間診療に止まった2日間はその50%、概ね1時間が短縮された50日間はその15%の休業損害が発生したと認めるのが相当である。」

 

 

コメント:事業所得者(商工業者、農林・水産業者、自由業者などの個人事業主)の休業損害は、現実の収入減があった場合に認められるとされています。何をもって「現実の収入減」とするかについては事案ごとに判断されることになりますが、事業所得者の場合、事故による「現実の収入減」を明確に立証し難く、休業損害の算定が困難な場合が多いのが現状です。この判決は、次のように、1営業日当たりの所得に休業日数ないし休業割合を乗じて得た額を休業損害とすると判断しました。

 

(前年度の申告所得+固定経費)÷年間営業日数×休業日数=休業損害

       └1営業日当たりの所得

 

そして、全日休業の場合は1営業日当たりの所得の100%を休業損害と認定し、8時間営業のうち1時間を短縮した場合は、1営業日当たりの所得の8分の1、すなわち15%を休業損害と認定しました。休業期間中どの程度労働能力を喪失していたか、事故前後の収入の差額がどうであったか等については踏み込んだ判断をしておらず、非常にシンプルな算定方法として参考になります。

 

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