2018年12月26日

トンネル内でハザードランプを転倒して渋滞減速中に追突された原告乗用車に過失はないと被告乗用車の一方的過失を認めた事案

【横浜地裁平成30年5月31日判決】(自保2027号 120頁)

 

[事案の概要]

男子役員車両運転手の原告は、片側2車線のトンネル内道路で第2車線を乗用車を運転して渋滞で減速したところ、被告運転の乗用車に追突され、頚椎捻挫、右肩腱板損傷等の傷害を負い、自賠責149号後遺障害認定を受け、損害の賠償を求めて訴えを提起した。原告は、「当初からハザードランプを点灯させていた」旨供述する一方、被告は、「原告車両のハザードランプが点灯していなかった」と供述するなど原被告間で供述の不一致があり、事故当時原告がハザードランプを点灯していたかが争点となった。

 

[判決の要旨]

原告は、当初からハザードランプを点灯させていた旨供述しており、供述の変遷はなく、内容にも不自然な点はないからその供述は信用することができ、本件事故当時、原告車両がハザードランプを点灯させていたことが認められる。被告は、原告車両のハザードランプが点灯していなかった記憶がはっきりしている理由として、ハザードランプが点灯していればもっと早めに止まると供述するにとどまり、被告が原告車両から目を離していた時間があることからすれば、ハザードランプの点灯を見過ごした可能性は否定できず、被告の前記供述は信用できない」とし、「原告には、株式会社Jにおける役員車運転の勤務歴が16年ほどあり、運転技術、マナーについて高い水準を勤務先から要求されていたこと、当日は、担当している役員が退任する特別な日であったことから、より細心の注意を払って運転していたことが認められ、原告車両が急減速した旨の被告の供述もその客観的資料による裏付けがなく、信用することができない」として、「原告が急減速したことを認めるに足りる証拠はなく、原告車両はハザードランプを点灯させていたと認められ、原告車両の停止位置が異常で不適切であったともいえないのであるから、(省略)原告には本件事故の予見可能性も回避可能性もないといわざるをえず、被告の一方的過失によるものであると認められる」として、原告乗用車の過失を否認した。

 

[コメント]:減速車に後続車が追突した場合、減速車側にハザードランプを点灯しなかった、不必要・不確実なアクセル操作を行ったなどの落ち度があり、そのような落ち度がなければ衝突を回避することができた可能性が認められる場合には、追突された減速車にも一定の過失が認められる可能性があります。

本件においては、被告側が原告にハザードランプを点灯しなかった過失があると主張しましたが、それを裏付ける客観的資料がなかったため、当事者の供述の信用性の有無が問題となりました。供述の信用性を判断する場合、①その供述が客観的証拠と矛盾しないか、②その供述の内容が合理的(不自然な点はないか)か、③供述の変遷がないかなどが総合的に考慮されることになります。

本判決においては、原告の供述の変遷がなく、内容にも不自然な点がないことのほか、原告の長年の運転手としての職歴、運転技術、マナーが原告の過失を否認するポイントとなったものと思われます。日頃から、運転マナーや安全運転を心がけておくことが大事ですね。

また、事故当事者間で事故態様、過失割合について争いとなることがよくあります。たとえ自身に落ち度がなくても、相手方が事実に反することを主張してきた場合、客観的資料がなければ自らに過失はないと立証するのは困難です。自己防衛として、ドライブレコーダーを設置しておくことも有用です。

 

 

 

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